[特許・実用新案・意匠/中国]改正専利審査指南 2026年1月1日施行(第1回) ~出願手続編~
中国国家知識産権局(以下、CNIPA)により、専利審査指南(以下、審査指南)が改正され、2026年1月1日より施行された。今回の改正には、発明者の身元情報の取扱い、特許・実用新案の同日併願(以下、特実同日併願)の運用、AI・ビッグデータ関連発明に関する審査の基準など、実務上大きな影響を及ぼす改正点が含まれている。今後、これらの改正点をピックアップし、連載形式で要点を整理するとともに実務上の留意点などを明確にしていく。
本改正の施行に関する経過措置は現時点(2026年1月末)で公表されていない。しかし、過去の改正施行時の経験を踏まえると、施行日時点でCNIPAに係属している案件(審査・審判中の案件)についても、本改正が適用されるものと考えられる。
(中国法上の「専利」とは、発明専利、実用新型専利及び外観設計専利を含み、それぞれ日本法上の特許、実用新案及び意匠に相当する。本連載では、読者のご理解を容易にする観点から、原則として、特許・実用新案・意匠といった表現を用いる。)
1.発明者の身元情報:記載義務の見直し(第一部分第一章4.1.2節)
今回の改正により、願書に発明者の身元情報を記載する必要のある対象発明者及び内容が見直された。従来は、身元情報の記載は筆頭発明者のみ必須とされ、それ以外の発明者については氏名のみの記載で足りた。本改正の施行後は、すべての発明者について、身元情報の記載が必要となった。

今回の改正は、特許の発明者に限らず、実用新案の考案者及び意匠の創作者にも同様に適用される。
2.特実同日併願:制度運用の厳格化(第二部分第三章6.2.2節)
今回の改正により、審査指南の規定が専利法実施細則に整合する形に改められ、特実同日併願の運用が全体として厳格化された。
(1)改正の背景
「特実同日併願」とは、同一出願人が同日に同様の発明創造について実用新案及び特許の双方を出願したものをいう(専利法9条1項但書)。以下、特実同日併願の関係規定の抄訳を示す。
1)専利法9条

2)専利法実施細則(日本の政令に相当)47条※1(以下、細則47条)

3)審査指南(日本の省令に相当)第二部分第三章6.2.2節※2

従来、特実同日併願である旨を声明した場合の取扱いについて、細則47条と審査指南との整合がとれていなかった。この不整合は以下の図1と図2から見て取れる。
図1:細則47条に基づく「特実同日併願」の取扱い 図2:従来の審査指南に基づく「特実同日併願」の取扱い

(2)改正の内容
今回の審査指南の改正により、特実同日併願である旨を声明した場合の取扱いに関する細則47条との不整合が解消され、CNIPAから出願人に対し、実用新案権の放棄を求める通知を発する運用に一本化された。これに伴い、特許権を取得するための手段は実用新案権の放棄に限られ、特許出願の補正によって権利の重複付与を回避する対応は認められなくなった。
CNIPAの改正説明会に基づいた現地代理人の見解によれば、仮に特許出願を補正してすべての拒絶理由を解消したとしても、実用新案権を放棄しない場合は専利法9条1項の要件を満たさないとして、当該特許出願は拒絶査定となるとのことである。

(3)改正の影響
従来、特実同日併願において、特許出願の補正を活用することで、特許権と実用新案権を併存させることが可能であったが、今回の改正によりこのメリットは失われた。
一方で、実用新案権の早期登録によって、特許権の取得までの権利の空白期間を補完できるというメリットは変わらない。そのため、早期の権利行使と、長期的かつ安定的な権利保護の両立を目指す場合には、特実同日併願は依然として有効な選択肢となり得ると考えられる。

(4)その他
・実用新案権の維持要件:
専利法9条1項但書に基づき、特実同日併願において特許権を取得するためには、先に取得した実用新案権がまだ消滅しておらず、かつ出願人が当該実用新案権の放棄を声明する必要がある。従って、年金管理などを含め、実用新案権を適切に維持しておく点に留意されたい。
・声明の管理:
今回の改正では、特実同日併願である旨の声明を行わなかった場合の取扱いも審査指南に明記され、専利法9条1項(同様の発明創造については一つの専利権のみを付与する)の規定に従って処理されることが明確になった。特実同日併願の利用を希望する場合は、出願時に双方の出願について当該声明を確実に行うよう留意されたい。
【出典】
1.CNIPA「关于修改《专利审查指南》的决定(局令第84号)」
2.CNIPA「关于修改《专利审查指南》的说明」
3.CNIPA「2025年《专利审查指南》修改内容解读」
4.CNIPA「关于《专利审查指南修改草案(征求意见稿)》的说明」等